書評 『ギャンブル依存国家・日本 パチンコから始まる精神疾患』帚木 蓬生

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レンタルギャンブル依存症の杉山友作です。
書評第二弾は、2014年12月に発行の、最新情報の詰まった書籍から。
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「パチンコ店は約1万2000店舗、ローソンが約1万1000店舗」

 

 

いかに日本がギャンブルにまみれた国であるかが実感できる数字である。
2014年の厚生労働省の発表で、ギャンブル依存症の疑いのある人の数が536万人であるとの調査結果が明らかになったが、
ギャンブルに縁のない人には全くピンと来ない数字なのではないだろうか。

それどころか、この数字に含まれるギャンブル依存症の当事者のほとんどですら、現実感を得ない数字なのではないだろうか。

 

 

 

ギャンブル依存症は、1980年に米国精神医学会が行動制御障害の中に入れた歴とした病気であるが、
未だに一般的にも当事者からもほとんど認知されない病なのだ。

「否認の病」と言われるその性質上、本人は本当に深刻な事態になってもなお、病気であることを認めるのが難しい。
またメディアは様々な事情から臭いものに蓋をするように、この話題を進んで取り上げないのである。

 

 

 

事実私も、ギャンブル依存症の酷かった当初「自分は楽しいからギャンブルを行っている」という感覚しか持ち合わせていなかったし、偶然性や出会いに恵まれなければ、
恐らくいまでも病気を認知することなくギャンブルを続けていたのではないかと思う。

 

 

 

本書は、水面下で日本に深刻な影響を与えている、ギャンブル依存症(書籍の中では最新の医学知識に基づきギャンブル症と表記されている)を取り巻く社会情勢や、病気の実態の奥深くに切り込む、
社会提言と最先端の知識に満ちた良書である。

 

 

 

実は私自身、この本の著者である精神科医、帚木 蓬生先生の前著『やめられない』を読んだことによってギャンブルを辞めることができたといっても過言ではない。
それだけにこの本に関しては、特別な期待を込めて拝読させて頂いたが、やはり内容の濃い新たな知識に満ちた書籍であった。

 

 

 

前著が依存症の当事者やその家族に向けて、病気の知識や対処法について細かく説明したマニュアル的な特色が強かったのに対し、
本書はその問題の実態や社会の課題について、長年最前線でこの問題と対峙し研究されてきた帚木先生が歯に衣着せぬ言葉でつづった社会提言的側面の強い本である。

 

 

 

帚木先生のクリニックを訪れたギャンブル依存症者に対する調査や、
自助団体において行ったアンケート、また国内外を問わないギャンブル依存症対策の実態から、日本が取るべき施策を打ち出した、現代において最もリアリティのある主張が本書にある。

 

 

 

—ギャンブル依存症を「自己責任」で片づけるのは間違っている。

 

 

私のような当事者が言っても説得力はないかもしれないが、帚木先生のこの主張には心の底から同意せざるを得ない。

食品メーカーが、商品の病的リスクを開示するのと同じで、本来ギャンブルの運営会社もその危険性をプレイヤーに周知し、病気が巻き起こす壊滅的な事件や状況に対し、予防策を打つべきなのである。

 

 

 

しかし実態は、見せかけだけの「のめりこみ防止」ポスターを張るくらいで、根本的治療や予防には注力がないのである。

メディアや警察、政治からの監視も機能せず、ギャンブルから甘い汁を吸う蜜月の関係に味を占めてしまっている。

 

 

 

製紙会社の会長による特別背任事件だけでなく、ベネッセの顧客流出事件も、近畿日本ツーリストの社員による着服事件も、
世間を騒がせた多くの事件が、ギャンブル依存症によって善悪の判断を失った人間によるものであるが、ほとんどの場合その原因は隠されてしまうのである。

 

 

 

外から見るとギャンブルを辞められない人間等、元々欠陥品であるかのように見えるかも知れない。
しかし、人間の脳は本当に脆い機械のようなものである。有識者が、本気で頭をひねれば、
意図的に人の行動を操り、嗜癖行動を誘発するマシンやルールを構築するのは簡単なことなのだ。

それを逆手にとって恐ろしく歪んだ利害構造が完成してしまった日本だからこそ、社会全体の正しい理解と、正しい予防策が急務を要するのである。

 

 

 

一例ではあるが、日本がどれだけ世界から遅れているか、ノルウェーの依存症対策を見るとよくわかる。
ノルウェーには、国営のギャンブル機器があるが
この機械には1日および一ヶ月の使用限度額が決められ、1時間プレイした後には、強制的な中断タイムがやってくるのだ。
さらに自分の過去のギャンブル履歴が見られ、ヘルプラインの電話番号も表示されるようになっている。

 

 

 

日本でも、最近になってようやく、「カジノ導入の是非に関わらずギャンブル依存症対策を行うべきである」という考え方のもと、与野党で勉強会が開かれるようになっている。
近年急速に進んでいるこうした動きは、著者の帚木先生を含めた医師や活動家の方々のご尽力によるところが大きく、依存症当事者としても非常に有り難い限りである。

 

 

 

日本という、世界で類を見ない程多くのギャンブル台とギャンブル依存症者を有する国において、この大仕事は一筋縄ではいかないであろう。
本書の主張だが、ギャンブル運営者のみならず、政府、警察、メディア、精神医学会、法律家、と様々な識者がこの問題に対して理解と尽力の限りを尽くしてようやく完遂される任務なのだと感じる。

 

 

 

普段この問題とかかわりのない方々には手に取りにくいテーマではあると思うが、私にはギャンブル依存症の問題は日本の経済的閉塞感の大きな原因であるとすら思える。実は全ての日本人に大きく影響している問題なのではないだろうか。
非常に幅広く深い知識の詰まった本書は、依存症の当事者として、多くの方々に読んで頂きたいと心から思える名著であった。

 

 

 

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この記事の投稿者 杉山友作

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